展示品の時計はどうして10時10分?

時計の展示品は、そのほとんどが10時10分を指している。ためしに『腕時計』と検索してもらいたい。画像検索の結果を見ると、上位18件の内、アナログ時計は11件。その中で概ね10時10分になっているものは9つもあるのだ。下位の検索画像もそのおよそ8割が10時10分を指している。それはなぜなのだろうか?

理由は諸説あるが、アメリカではエブラハム・リンカーンとジョン・F・ケネディ、そしてキング牧師の死と関係があると考えられているようだ。3人の死亡時刻にちなんで、時計は全て10時10分であると言われている。しかし、リンカーンは夜10時15分に銃撃され、翌日7時22分に亡くなっている。ケネディも正午過ぎに狙撃され、キング牧師も夕方6時に亡くなっている。3人の偉業を称えて、その時刻を指し示していると言われている。

また海外では、日本のセイコーが意図的にその時間を設定したという俗説もある。原爆投下の追悼の意味を込めて、10時10分にしたと考えられているようだ。反米感情の表出として、セイコーが意図的に原爆投下時刻を時計に刻んだと考えられたというのだ。しかし、ご承知の通り原爆投下時刻は広島8時15分、長崎11時2分で時計の指す時刻とは関係がない。

上記のアメリカの偉人たちの説も日本の原爆の説も、実際の時間と違う訳だが、止まった時計が指し示す10時10分には、何か意味があると、人々に感じさせてしまうのだろう。

ちなみに日本の時計メーカーが、厳密に指し示している時間は次の通りだ。セイコーは10時8分42秒、シチズンは10時9分35秒、カシオは10時8分37秒、オリエントは10時10分35秒。これらの時間の理由は以下の3つ。

・針をバラバラに配して、何本針があるのか見易くする
・針の広がりが上向きの方が、時計が美しく見える
・メーカー名の左右に針を配して、メーカー名を見易くするため

工夫の末に編み出された時間なのかも知れない。

さらにこのような逸話もある。その昔、アメリカ大恐慌時代、1930年頃。時計メーカーが出庫する製品は全部8時20分を指していた。だが、時計が泣き顔に見えていたというのだ。『∧』の形である。これでは気持ちも浮かばれないと考えたある販売員が、「厳しい時ほど、人々に笑顔になってもらいたい」と考え、店の時計を全部10時10分にした。『V』で時計を笑顔に見立てた。時計の笑顔の話は、瞬く間に町中に広まり、時計店の売り上げは飛躍的に伸びたという。

これは、小さな思いやりが暗い日常を明るくした逸話である。さて、展示品の時計はどうして10時10分なのだろうか?その真相はまだ分からずじまいなのである・・・・。